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「Self and Others」 牛腸茂雄
2010年3月24日掲載

 生まれたばかりの赤ちゃんから始まり、霧の運動場を走ってゆく子供たちで終わる60点の作品。
 これらの被写体が誰なのか、カタログなどで調べることもできるけれど、あえてそのようなことをしないでいる。そんなことをすると、なんだかこの作品の意味を読み違えてしまうような気がするのだ。
 たとえばここに挙げた作品。何が写されているかを考える以前に、私はこの場所に行ったことがあるような気がしてならない。
 夏の高原。セミが鳴いて風が吹いている。ゆるやかに傾斜した山の裾野。土は黒く湿っている。草むらを歩けばキリギリスやバッタが飛び出してくる。都会から遊びに来て虫取りをしている子供たちが私を見ている…。
 こんなことは勝手な思いこみに過ぎないのかもしれない。でも、そう感じずにはいられない。作品を見ている私を、作品がまっすぐに見返してくる―そんな気がする。

県立美術館学芸課長 斎藤 郁夫