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「残された壁(女と男C)」1967年 中本達也
2010年6月23日掲載

 中本達也の描いた人物像は、前期と後期で大きく異なる。前期では、厚い油絵具の層のなかに情念を塗り込めていったような、陰鬱に黙する硬い表情が見られる。
 後期に登場するのは、白い背景のなかに突如として浮かび上がるかのようなデフォルメされた人間たち。彼ら・彼女らの姿は、なぜここに自分たちがいるのかわからなくなってしまったかのように見える。すこし寂しそうにも見え、自分の運命と真剣に向き合わざるをえなくなった人間の姿のようにも思える。
 およそ現代風ではない重さ、暗さ、きまじめさ。そんな古めかしさを感じるのは、やはり描かれた時代のせいなのだろう。
 けれど、中本の人物像を眺めていて、何か忘れていたものに思い当たるようであれば、彼ら・彼女らの無言の言葉は時代を超えて、現代にまではっきりと届いているのではないか…と思う。

県立美術館学芸専門監 斎藤 郁夫