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No.83 『三月 ひなのつき』
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よし子は3月3日が近づくたびに「自分のおひな様がほしい」と思うのですが、家の事情やお母さんの気持ちを考えるとなかなか言えません。お母さんは空襲で焼けた自分のおひな様が忘れられないのです。それは心を込めて作られた木彫りの人形でした。
お母さんが「自分の娘にも納得のいくひと揃えを持たせたい」と思って探しているうちに時は流れ、よし子も10歳になりました。 桃の節句を間近にしたある日、よし子はとうとうお母さんに向かって言います。 「やすっぽいのでいいのよ! 安っぽい金ぴかので あたしはいいの!」 泣きじゃくるよし子を抱きしめながら、お母さんの心もゆれ動きます。 数日後、帰宅したよし子を待っていたのは、心を込めて選んだ和紙で折られた、お母さん手作りのおひな様でした。 どんなに色あせても、よし子はこのおひな様をお母さんの思いとともに一生大切にしていくことでしょう。(ぶどうの木代表・中村佳恵) |