ニュース/ イベント/ 山口周辺/ 札の辻・21/ 稜線/ おんなの目/ キラッ/
えほんのとびら/ サンデー美術館/ おもしろ小箱/ 施設情報/ 観光/ 子育て/ 映画/
ご意見・ご質問/ バックナンバー/ 広告掲載/ 会社案内

ホームおんなの目>2009年4月

おんなの目

春の色 (2009年4月22日)
 田中冬二(1894〜1980)の詩に“晩春暮色”がある。私はこの作品を読んで、目の前に黄色系の色がパッと広がった。春は、黄色だな、と確信した。春は、青色だと思っていたが、違う。

  晩春暮色   田中冬二
 遠く蛙が泣いてゐた

 屋敷町の とある家の門に
 黄色ぽい提燈を点けた医者の俥が
 待ってゐた

 まず暮色は、オレンジ色、蜜柑色。蛙は、土色、黄土色。屋敷町といえば、土塀。それは蛙と同じ黄土色。提燈も文字通り、黄色ぽい光を放つ。
 俥夫は、蜜柑色の夕暮れの中、黄土色の土塀に囲まれた屋敷の前で、遠くに冬眠から起き出して来たばかりの土色の蛙の声を聞く。その声もまだ眠っていた土の中の匂いを引きずって黄色ぽい。提燈の黄色ぽい明かりは、夕暮れの蜜柑色を深くする。俥夫は、一人医者を待つ。彼も夕暮れの色に染まって黄色ぽい。医者の白衣も蜜柑色に染まっている。病人の部屋の提燈も黄色ぽく、障子は薄い褐色。その光に浮かぶ患者の顔色は、多分それも黄色ぽい。もし、重病なら、土色かもしれない。黄土色の蛙の声が遠くにまた聞こえる。春は全て、黄色に満ちている。

朝の自転車 (2009年4月17日)
 朝の8時に国道9号線を吉敷から県庁まで、自転車で走った。私は、自転車で走るのには普通の人より速いという自信があった。スピード狂ではないが、バランス良く速く走ることができる。なんたって50年の走りの実績がある。しかし、自惚れは、はじけ散った。
 朝の自転車は速い! 皆さん、速い。私をどんどん追い越して行く。あっという間に5、6人に抜かれる。なんだこれは! 自転車の性能が違う?いや、そうではない。気がついた。昼間と朝では、乗り手に違いがあるのだ。
 朝は、学生か通勤者。私よりずっと若い人達なのだ。昼間の敵(?)は、私と同じ初期高齢者か私より上の後期高齢者。全く体力が違う。
 それに朝の彼等には、遅刻せずに行かねばならない目的地がある。学校だったり会社だったり。昼間、自転車に乗っている人には、そのような切実な目的地を持っている人は少ないように思う。その証拠に彼等は、右を向いたり、左を向いたり、必死でペダルを漕いではいない。
 朝と昼だけでもこんなに違いがあるのだもの。私の知らない広い世界では、どんな人がどのように生きているのだろう。知りたい、見たい、と思った。出かけますか、久し振りに海外旅行に…資金の算段を考えると、ペダルが重くなった。
骨の問題 (2009年4月10日)
 60代以上の女性が3人寄れば、話のテーマは次のような順序で展開される。
 まず「元気だった?」「それがね、腰を痛めてね」と自身の体調の話となる。「それなら○○病院がいいよ」と病院の情報が飛び交う。「腰が痛いのに姑の介護をしているのよ」と親族の介護の話になる。60代で介護経験のない人はいない。現在真っ最中という人が大半だ。「介護してもらえる世代はいいわよね。私達になると誰も世話してくれる人はいないわ」と自身の行く末の話に進む。一挙に老人ホームや終末医療にと話題は騒然となり、みんなの顔が曇る。「年金で入れるホームが少ない」「どんな状態でも最後まで面倒を見てくれる病院は○○だけよ」となり最終的には、骨の話となる。骨、すなわち遺骨である。遺骨をどうするかだ。遺骨は、骨壷に入れて墓に納めればいい、と考えている人は、永代墓守する人間に恵まれるという確信のある人のすること…らしい。一人で身の始末をしなければならない人はどうするか? 「海に散骨してもらう」「違法ではないの?」「節度をもって葬送の一つとして行う限り違法ではないのよ」「樹木葬はどうかしら?」。ひとしきり骨の話で盛り上がる。蛇足だが、遺骨をペンダントにしたり、遺灰からダイヤモンドを作ることもできるらしい。