文化芸術団体のネットワークづくりや、山口にちなんだ古今の優れた作品・人物に光を当てることなどによって「市民の郷土への誇りを高めよう」と活動している「明日を紡ぐ大地の会」(福島光子代表)は、今回で最後となる「2025市民みんなの文化祭」を、9月7日(日)に開催する。会場はニューメディアプラザ山口(山口市熊野町1)で、午後1時半開演。
「市民みんなの文化祭」は、地域に根を張って頑張っている芸術文化団体・個人の「共同発表会」として、同団体が2014年から続けてきた。だが、同団体の高齢化も進み、本格的な舞台の創造が難しくなったことから、今回での終了を決めた。これまでの出演団体は、120を超えている。
今回出演するのは、「ブラッドオレンジ」「むつみ会」「Ototumugiサクソフォンアンサンブル」「山口鷺流狂言保存会」「明日を紡ぐ大地の会」の5団体。
パーカッション奏者の川手艶子さん率いる5人によるユニット「ブラッドオレンジ」は、昭和の歌謡曲「UFO」「異邦人」「さよならの向こう側」「夢みたもの」を歌う。
日本舞踊花柳流「むつみ会」は、8人で「清元 梅の春」をあでやかに踊る。
山口県内の社会人・学生で構成された「Ototumugiサクソフォンアンサンブル」の7人は、「リンゴ追分」「ズルい女」「ハナミズキ」「ありがとう」を楽しく演奏。
昨年に続き2回目の参加となる「山口鷺流狂言保存会」は、県指定無形文化財保持者の2人、米本文明さんと米本太郎さんが出演し、アメリカ公演でも披露した「千鳥」を上演する。
和田健と山頭火との交流を軸に 「大地の会」の朗読劇
主催する「明日を紡ぐ大地の会」は、郷土の詩人・和田健に焦点を当てた朗読劇「へその耳・自分探しの旅-詩人 和田 健の世界」を上演する。
和田は、1915年(大正4年)福岡県門司市生まれ。1921年(大正10年)に本籍のある山口町(現山口市)に移り、今道尋常高等小学校(現白石小)に入学。1929年(昭和4年)から県立図書館に勤務し、記者職を経て、1942年(昭和17年)に山口市役所へ入庁した。福祉や社会教育に関連するポストを歴任し、1972年(昭和47年)に総務部長で定年退職。その後は、宮野公民館長を3期・6年勤めた。その一方で、16歳から詩作を始め、詩集「生活の貌」(1939年)」、「和田健詩集」(1953年)なども発表。晩年には郷土文学の顕彰活動にも取り組み、「防長文学散歩」(1974年)や「郷土の文学・本と人」(1975年)などの作品もある。大正・昭和・平成と3代を生きて、2013年(平成25年)に98歳で永眠した。
劇の演題は、最後の詩集「へその耳」(2002年)からつけられた。舞台では、和田の波乱に満ちた人生を、日本人が歩んだ戦前・戦中・戦後100年の足跡と重ねて、彼の詩を通じて振り返る。特に、1938年(昭和13年)に若い仲間と共に創刊した詩誌「詩園」をきっかけとした俳人・種田山頭火との交流は、その後の彼に与えた影響も大きいため、軸として描かれる。
台本を書いた同会の福島久嘉さんは「これまで、山口の詩人・作家の作品や歴史的な出来事を題材に、26編の新作戯曲を創作し、31回の大型公演を重ねてきた。一貫したテーマは『日本および日本人は、これからどう生きるべきか?』。そして最終回の演目には『日本、そして郷土を愛した和田氏のように、わたしたちもこれから生きていきたい』との思いと決意を込めて、2017年が初演の本作を選んだ。感謝の気持ちとともに、精いっぱい演じたい」と話している。
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前売り券は一般1000円で、山口市民会館、C・S赤れんが、YCAM、山口井筒屋、三好屋レコード店で販売中。当日料金は1200円で、大学生500円、高校生以下は無料。問い合わせは同会(TEL083-921-2476)へ。