底抜けに明るいこの男を見ていたら、30年前に見た一枚の油絵を思い出した
ドイツ留学から帰ってきたばかりの画家のアトリエに立ち寄った時のこと。黄緑色を背景に、脛毛(すねげ)たっぷりの脚を描いた絵がたてかけてあったのである
「なんだ、これは?」ー「伝統だよ、伝統!」
あまりの迫力についつい説得されたことにしたのだが、もちろん納得はしてないー「脛毛絵」の伝統なんて!
その不満を放置して30年。こんなにも堂々とした脛毛に遭遇するとは!おまけに、眉毛、腕毛、そして泥棒髭までも
その正体はといえば、1500年ほど前、中国に禅宗の基礎を築いたとされる達磨大師である
職人が両目に筆を入れ、精魂込めて仕上げた〈だるま〉の、あまりの出来栄えゆえに達磨本人が蘇ってきたという設定
1500年の眠りから覚めた男の決めポーズ。国芳アレンジの底抜けのバカバカしさがイイね!
※「歌川国芳展」(9月25日〜)展示作品より
山口県立美術館 河野 通孝