先日の夕刻― 雨上りの美術館裏でいつもの猫(やつ)と目が合った。じっと、コチラを窺っている。知らんぷりして近づいていくと、小走りで私との距離を保つ。
誰もいないのをしっかりと確かめた後、ネコナデ声で誘惑―「にゃお~ん、にぃゃお~ん」・・・・。
いつものごとく悠然と立ち去ろうとするその背中を眺めていた時、岩合さんのあの決め台詞を思い出した。
「《いい子だね~》」・・・・・・・。
「ちぇっ!」
それはともかくこの写真。岩合さんによれば、「日の出をパラグアイカイマンと撮りたくて」、なんと、匍匐(ほふく)前進で近づいていったらしい。
モゾモゾと近づいてくる奇妙な生命体。気付いた彼らが次々に川に逃げ込むなか、堂々と日の出を待ち構えていたのがコイツ。「視線を感じ」ながらも、「真横に並んでカメラ」を構えた。
「怖くないんですか?」という小生の愚問に一言 ―「歯並びも綺麗でしょ」。
※「岩合光昭写真展」より(9月7日まで)
山口県立美術館 河野 通孝