秋の日は釣瓶落とし。すぐに夕暮れになりますね。気が急きます。そして、少し寂しくなります。
例えば、まだほのかに陽のある道に、街燈が点り道行く人に薄い影を作る時。柿の木の枝先の実がぼんやりとした輪郭で揺れている時。顔の周りにまとわりつく蚊の羽音が弱弱しい。立ち話のご近所さんと別れて、肩をすくめ小走りに家に入り鍵をきつく締めた時。素足の足先を冷たく感じた時。
淋しくなったら、ラジオの音を大きくしてお湯を沸かし、千江さんの旅の土産の知覧の茶を淹れる。湯気が頬にかかり、香りが部屋に満ちる。心が膨れていく。美味しく飲んでいると、周防大島の美幸さんから電話。
「今年もアサギマダラが私の庭に来たとよ。三頭もよ。フジバカマが満開なんよ。夏の間、かかさず水やりしたんよ。暑さで私は倒れそうだったけれど頑張って良かった。来たとよ、来たとよ。忘れんと今年も来たとよ。アサギマダラの写真送るね」。
我が家にはアサギマダラは来ない。庭のフジバカマは紫の小さな花しかつけていない。夏の間熱心に水をやらなかったからかしら? 来年こそは、美幸さんに手入れ方法を習ってフジバカマを咲かせ、アサギマダラを迎えよう。秋の夕暮れが淋しくないように。