〈お正月〉といえば、いまや箱根駅伝をあげる方も多いと思うが、かつての私にとってのそれは「おめでとうございます~」でおなじみの海老一染之助・染太郎師匠。張りのある一声だけで有無を言わせぬ華やかさが漂った。最近のお正月がどことなく物足りないのはお二人が亡くなったせいに違いない。
開いた和傘の上で桝や毬をコロコロと廻し、「廻っております~」と拍手を促す軽妙なる大神楽曲芸。傘には「末広がり」、桝には「益々の繁盛」、毬には「丸く収める」などといった縁起が込められていた。
実は当館にもあるのです。おめでたさが隠された縁起のいい絵が。《蓬莱(ほうらい)山図》もその一つ。「蓬莱山」とは、古代中国で〈東の海の彼方〉にあると信じられた〈不老不死〉の霊山。
つまりこれは、亀の上に載せられたただの盆栽ではなく、日本人にとってはこの上もなくありがたい画題なのです。
大神楽とはまた一味違ったおめでたさ。畳の展示室で、静かに味わう新春はいかがでしょうか。
※「新春寿ぐ吉祥画」(2026年2月4日まで)展示作品より
山口県立美術館 河野 通孝