お調子ものの青年アフマドは、自分の斧に「やり一本で三百もの敵をたおす勇士アフマド」と彫ってほしいと鍛冶屋に頼みました。「ウソっぱちじゃないか」「ウソじゃないよ、ほんとうだよ。たおすのは、人じゃなくて、ハエだけどね」
村の人たちはアフマドを「勇士、勇士」とはやしたて、そのうちだれもが「勇士アフマド」と呼ぶようになりました。
このうわさは王さまの耳にも入りました。そのころこの国は隣りの国にせめこまれ、困っていたのです。
そこで王さまは、アフマドに敵を追い払ってもらおうと考えました。
戦い方どころか馬の乗り方すら知らないアフマドは途方にくれましたが、命令は命令。覚悟を決めるしかありません。
ところが、ある偶然のできごとにより、誰ひとり傷つけることなく敵を追いやることができたのです。
中東イランで語りつがれてきた昔話。古い細密画や石版画を参考に描かれたユーモラスな絵と、どこかピントのはずれた登場人物たちがくりひろげるテンポよいおはなしとが一体となった、後味のよい作品です。
BL出版(2025年)
文:愛甲 恵子
絵:網代 幸介
ぶどうの木代表 中村 佳恵