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札の辻・21

札の辻・21 No.515(2010年3月6日)
 いきいきと三月生る
 雲の奥    龍太

 この句はあざやかに三月に春到来を感じる句で、二月の寒さの中でなく四月の温暖さでもない。まだ少しは冷えこみも残る浅い春であればこそ三月生るの語感が生きる。
 ことしの寒波の異常さは型破りだった。立春以降は三寒四温と呼ばれ三日寒い日がつづくと次には暖かい日差しを期待するのだが、例年になく寒冷前線はどっかりと腰をおろしつづけた。
 しかし2月末からわが庭の馬酔木が白い房状の花をつけ、コブシもひそやかながら咲いて春めくということば通りに水ぬるむ時期を迎えた。
 中国の詩人蘇東坡の絶句に、
 春江水暖鴨先知
の一節がある。
「春の川に水温めば鴨が先ず知る」という意味で、近くの仁保川の冬鳥たちも北帰行が始まり居残り組のカイツブリ夫婦が目立ってくる。
 海にも春潮が寄せ旬の味覚の表現には二・三のメバル、三・四のカレイがある。どちらも早春の魚族の代表格でメバルは日本列島沿岸の岩礁地帯に棲息し、白身で淡泊な味は煮つけによく塩焼きや唐揚げにもいける。
 アイヌでは雪解けで長万部の山々にカレイの型をした雪形が現れるようになるとカレイ漁をはじめるといわれてきた。
 カレイ料理もメバル共々に早春の食感を豊かに舌へ乗せる。(鱧)

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