山口市役所の新しい本庁舎棟(山口市亀山2)が、5月7日(水)に全面開庁する。
旧庁舎棟は、元々山口大学教育学部の校舎で、もっとも古い棟は1961年の建築だ。大学の吉田キャンパス(山口市平川)への移転(1972年)により、敷地と校舎を山口市が取得。1975年から50年間使用してきた。だが、建物、電気設備、空調設備、給排水設備などの老朽化も進み、耐震性・バリアフリー化・情報化・行政サービス提供・執務スペースなど多くの面で課題を抱えていた。
そこで市は、2015年9月に49人で構成する検討委員会を設置。同委員会からの答申や、市議会からの提言書、パブリックコメントなどを受けて、2017年9月に現在地への建て替え整備を決定した。2018年3月に整備基本方針、2019年6月に整備基本計画を策定。その後は、コロナ禍による各種対応を迫られながらも設計作業を進め、2023年3月に建設工事に着手。2年間の工事を経て、今年3月に完成した。
旧庁舎棟の西隣に整備された新本庁舎棟は、地下1階、地上6階建てで、延べ床面積2万4129平方メートル。鉄骨一部鉄筋コンクリート造で、総事業費は約139億8000万円。資材の高騰などが影響し、当初より約8億円のコスト高となった。
新本庁舎の基本理念は「白い鐘塔(しょうとう)に佇(たたず)む、ひと・まち・未来にやさしい市民の丘」。周囲の景観や歴史・環境との調和を考慮した外観で、グレーの壁に山口サビエル記念聖堂の鐘塔に合わせた白いひさしが特徴だ。
また、6月からは2期工事を開始。旧庁舎の解体後、地下1階・地上2階建ての市民交流棟、約300台分の新立体駐車場、広場を整備する。全体の完成は、2028年8月ごろと予定されている。
市民交流棟完成後に接続する部分
全体の完成後は、旧庁舎側に立てられる市民交流棟がメインの入り口となる。新本庁舎棟の1階はその高さ。単体の建物だと1階フロアが地下1階、2階フロアが1階と数えられており、注意が必要だ。
地下1階の駐車場には、55台分の来庁者向けスペースが用意。旧庁舎の駐車場も、しばらくの間は一部利用可能。
地下駐車場
「ひとにやさしい」
基本理念一つ目の「ひとにやさしい」は、市民利用の多い各種証明書の発行、年金、福祉、税、教育、引っ越しなどの窓口を1・2階に集約したことが、まずあげられる。1階中央には円形カウンターの「総合案内」が設置。来庁者は、そこに置かれた端末で「受付番号」を発券する。3人のフロアマネジャーも、質問・相談に答えてくれる。2階にも、目的別に2台の端末が置かれる。そのことで、目的ごとにワンストップで対応してもらえる「書かない」「待たない」窓口サービスを実現させる。端末は、日本語だけでなく、英語、中国語、市内在住者も多いベトナム語に対応している。
総合案内
総合案内の受付番号発行機
2階の発券機
さらに館内は、ユニバーサルデザイン(文化・言語・国籍・老若男女・障がい・能力のいかんを問わず利用できる)を採用し、ピクトグラム(イラストを使って視覚的に意味が伝わるよう作られたマーク)や大きな文字で認識しやすい各種サインを設置。トイレも、オストメイト、ベビーホルダー、ユニバーサルシートなど、さまざまな機能を持ったトイレを分散して配置。各階に置かれた「トイレマップ」で、その位置を示している。エレベーターは、4台ある。
さまざまな機能のトイレを配置
また、建物には免震構造を採用。地震が発生しても、速やかに業務を再開することができる。これまで本庁舎外に分散して置かれていた環境、教育、消防などの部署も本庁舎内に集約した。
「まちにやさしい」
大内塗や徳地和紙などの地元伝統工芸品、滑(なめら)マツ等市内産木材なども壁やサインなどに使用。外観は、隣接する亀山公園や山口サビエル記念聖堂の白い鐘塔との景観に配慮している。
6階には市内産木材を活用
滑松を議場には使用
2期工事で整備される市民交流棟、広場、新立体駐車場が完成すれば、お祭りやイベントも開催。パークロード沿いの県立美術館、県立博物館、県立図書館などの文化施設および中心商店街を結ぶハブにもなる。植樹や緑地化もされ、周辺環境との共生・調和も図られる。
「未来にやさしい」
100年先まで使えるサステナブル(持続可能)な庁舎となるよう、維持管理や更新がしやすい材料や仕上げを採用した。庁舎の西側は、アルミルーバーによって西日を遮蔽(しゃへい)。天井の金属パネルに冷温水を循環させる「天井放射空調」を導入したり、明るさに応じて自動調光するLED照明を設置したりした。従来の建物と比べ、必要な1次エネルギー消費量を50%以上削減する「ZEB Ready」の認証を、県内の庁舎としては初めて受けた。さらに、建築物省エネ性能表示制度「BELS」の最高ランクである五つ星も獲得した。
天井にはLEDと放射パネル
ホースを通じて冷温水が循環
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