朝から強い風が吹いていた水曜日。プラ容器の収集日なので大きなビニール袋をいっぱいにして町内の集積場に持って行った。私は、ずぼら者で大量に溜め込んで一カ月に一回大袋を担いで回収日に出す。指定の籠の中にプラをガラガラと音高く入れる。なんとまあ、よくこれだけの量を消費したものだと、自分のしたことなのにあきれる。
帰り道、空になった袋の口が開き風が袋を膨らませる。ふらつく。力士並の立派な腰回りをしている、が踏ん張る脚力が弱い。袋が風を孕んだまま背中に回る。背負う形でのろのろ歩いていると、Yさんが「風神のようだね」と笑った。俵屋宗達の“風神雷神図”が浮かぶ。風神は格好良いという記憶がある。私って格好いいんだ。嬉しくなり、益々袋に風を集めて膨らませた。帰って画集を引っ張り出して“風神雷神図”を見た。
背中に背丈より長い風袋。対面の雷神を威嚇するように、踏み出した右足、けり上げた左足。逆立つ髪・・・? 膨らんだビニール袋と逆立った私の髪を見て、風神だと言われたのかもしれない。いや、一瞬怖い鬼と思われたのかもしれないが、Yさんの慈悲の心が風神と言わせた。次の風の強い日にはもっと大袋を持って薄毛の髪を目いっぱい逆立て両足を踏ん張って立派な風神になるぞ。