萩往還、石州街道に続いて山口市内の大内文化の史跡を訪ねるシリーズを描く機会をいただいたので、引き続きご愛読をお願いしたい。その第一弾として採りあげるのは国宝・瑠璃光寺五重塔である。これこそが今に残る大内文化の最右翼に位置づけられるものであり、我々山口市民が誇りとするものと言って異論を挟む人はまずいないだろう。それだけに、今さら塔の歴史や心柱と呼ばれる構造上の秘密などについてくどくど述べる必要もないと思う。
数年前、奈良の法隆寺を訪れ、五重塔を初めて目の前にした時に、思わず「勝った!」と思った。なぜか? 歴史は古くとも、法隆寺のそれは全体の印象が随分堅く、伸びやかさに欠けており、瑠璃光寺の檜皮葺の柔らかなカーブを描く屋根が生み出す優雅さには到底及ばないと思ったからである。この思いには、単に身贔屓とは断じられぬ真実があると思っている。
文・イラスト=古谷眞之助