「私、もうクリスマスプレゼント貰ったわよ」と、八十歳の愛子さんが言った。「誰から? どんなプレゼントなの」と同席したプレゼントなど貰ったことのない仲間が口を尖がらせて訊いた。
八月、愛子さんは腿に小さな腫れものができた。足をかばいながら美容院に行った。洗髪で仰向けになった。終わって起き上がろうとしたら足に力が入らなくて立てなかった。もがいていたら、すぐにイケメンの美容師さんが抱き起こしてくれた。九月には腫物もひき支障なく行動できるのに、美容院で洗髪のときにまだ起き上がれないそぶりをしてもがいた。又、イケメンが抱き起こした。十月も十一月も、もがいて抱き起こしてもらった。十二月、いつものように美容院に行って、洗髪の時もがいたら、どうぞ、と言ってイケメン美容師から杖を差し出された。クリスマスプレゼントです、って。洒落た木の杖。
「へえー、もがいたら貰えるのね」
「どこの美容院なの。私も行こう。私は本当に膝が悪いのよ」
「あなた、この間は地区の運動会に出てたじゃないの」
「美容院の仰向けの洗髪は角度によったら腰が痛いわよね。すぐには立ち上がれないわ。支えがいるわ。いいプレゼント貰ったわね」
「雪のクリスマスならいいわね」