「ぼくは アリになってしまった。」
人間だったとき「ぼく」は数や図形の世界を探求する数学者でした。どんな国でも5は奇数だし、3+4は7。数学は、人間どうしであれば国をこえ、人種をこえて理解しあえる学問なのです。
アリにもそれが通じるのでしょうか。アリになった「ぼく」は、「ここにアスパラの実が七つある」という事実をアリに伝えようとしました。が、どうしてもわかってもらえません。
彼らには数が理解できないのだ、と思いはじめたとき、一匹のアリがこう教えてくれました。
「わたしたちにとって数には、色や輝きや動きがあるの。」
それは「ぼく」が今まで想像もしたことのない数の概念でした。
まぶしいくらい白い1やすばやくて青い1を使って朝露の数を数えたり、川の流れる速さをはかったりするアリたちの世界。そこにはどんな数学の風景が広がっているのでしょう。
アリたちに導かれて「ぼく」はたくさんのふしぎの広がる数学の宇宙へと、新たな扉を開いたのでした。
福音館書店
文:森田 真生
絵:脇阪 克二
ぶどうの木代表 中村 佳恵