18世紀にはすでに随一の国際的観光都市であったヴェネツィアにおいても、とりわけエキサイティングなイベントが、幅2メートルの大画面に克明に描かれている。カナレット(1697~1768)中期の力作である。
どこまでも広がる青空、極端な遠近法で描かれたカナル・グランデ(この水上都市の大動脈ともいうべき大運河)、河岸に隙間なく並ぶ建築群。今も変わらぬこの景色を舞台にボートレースが行われている―その華やかさはといえば、現在のF1に近いのかもしれない。
さて、その舞台となったカナル・グランデ。実は250年前、江戸っ子たちが目にしていたふしがあるのである。
なんと、歌麿や蔦屋重三郎の同時代人浮世絵師・歌川豊春が、カナレット描くところのカナル・グランデ(の銅版複製画)をもとに作品に仕立てているのだ。
世界は狭い!
※「カナレットとヴェネツィアの輝き」展(6月22日まで)展示作品より
山口県立美術館 河野 通孝