早智子さんとスーパーで出会った。お米が並べられた棚の前で偶然バッタリ。「暑いわね」と眉をしかめて唱和。「お米買うの?」と私。
棚には、値段の高い順に各地の個性的な名前のブランド米が並んでいる。下の段に台湾米。
「この間、開店早々に来たら備蓄米があったわよ。もちろん買ったわ」と彼女。私達の横で思案していた知らない初老の女性が「備蓄米、美味しかったですか?」と問うてきた。「ええ、美味しかったですよ」と早智子さん。「でも、やっぱり高いお米の方が美味しいでしょう。私は寿命も短い年寄りだから美味しいお米を食べたいわ」と笑顔でお米をカートに入れた。
「この棚のお米を見ていたら、中学時代を思い出したわ。金額がテストの点数よ。試験の度に点数が高い順に壁にずらりと張り出され、曝された。金額が高いお米が美味しくて安いお米は不味い。テストの点が高い人は優秀で低い人は人格まで否定された気がしたわ」と早智子さん。「嫌だったわね」と劣等生だった私。
お米には、それぞれに産地特有の地味があるだろう。植えられた地で農家の人の手により丹精込めて育てられた。個性に値をつけるなんて。
早智子さんは出身地の米袋を抱き、私は友の暮らす国、台湾米を買った。