今年の十干十二支は「丙午(ひのえうま)」。「丙」は、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)では「火性の陽」。「午」も同様な意味を持つことから、「火の気が重複する非常に強い年」と言われる。そのため昭和の丙午の1966年には「この年に生まれた女性は気性が荒く、災いをもたらす」との迷信から、出生数が激減した。だが、少子化の進む令和の丙午では、産み控えはなさそうだ。むしろ「火」の勢いを、「躍動」「力強さ」「成功」「前進」などに結びつけていきたい。丙午の山口市はどのような年になるのか、伊藤和貴山口市長に聞いた。
(聞き手/サンデー山口社長 開作真人)
今年の十干十二支は「丙午」 「躍動」「力強さ」「成功」「前進」に結びつけられるか
―あけましておめでとうございます。最初に、昨年10月の市長選挙で再任され、2期目を迎えられた市政への抱負をお聞かせください。
伊藤 市民や各方面の皆さま方から力強いご支援、ご支持をいただき、2期目となる市政をお預かりさせていただくこととなりました。改めて、その責任の重さに身の引き締まる思いです。私は「市民を大切に。地域を大切に」という思いのもと、1期目の市政運営を通じて「ずっと元気な山口」の実現を目指してきました。そして、市長選挙を通じて市内21地域を回り、いろいろな声を聞く中で、改めてこのような思いを強くしました。市民の皆さまの暮らしを守り、地域のコミュニティーや人と人とのつながりを大切にしながら、未来を見据えたまちづくりを進めていきます。「安心。つながり。明るい未来」のある「ずっと元気な山口」を実現したいと考えています。
伊藤和貴山口市長
―次に、昨年の市政を総括していただけますか。
伊藤 昨年は、1市4町(旧山口市・小郡町・秋穂町・阿知須町・徳地町)の合併による新市誕生から20年の節目となる中、新市のまちづくりの総仕上げともいえる年でした。まず、山口都市核づくりでは、5月に市民サービスの拠点となる新本庁舎棟が開庁。さらに、湯田温泉こんこんパークも6月にオープンし、新たなにぎわいも生まれています。一方、小郡都市核づくりでは、産業交流拠点施設や市街地再開発への支援などを進めてきた中で、地価調査における新山口駅周辺の商業地基準地価の上昇率が5年連続で県内1位になるなど、その効果も感じられるようになりました。また、9月に開設した「山口市移住サポートセンター すむ住む相談所」を中心とした移住定住の促進や、農林水産業の振興、「道の駅仁保の郷」の機能強化や「道の駅あいお」の移転整備なども着実に進めています。さらには、都市と農山村とを結ぶ広域ネットワークの機能強化として、国道9号における木戸山道路改修や、国道2号の台道・鋳銭司拡幅も、国によって進められています。
―では、選挙の際に掲げられた「新たなまちづくりへの挑戦」や、2026年度予算編成方針に掲げられた内容について伺っていきます。最初に、「都市全体の元気度を上げる」について、ご説明をお願いします。
伊藤 今後、本市も一定程度の人口減少が避けられない中、市民生活におけるさまざまな活動や事業者における経済活動など、あらゆる活動の規模が縮小し、ひいては都市全体の元気が失われていくことが危惧されます。その中で「都市全体の元気度を上げる」ためには、市民一人ひとり、各事業者の活動量や活動の質が向上するような取り組みが求められます。そのことが、ひいてはまちの活力、元気度を保っていくことにつながっていくと考えています。
「山口らしさ」とは?
―次に、「山口に来たい、住み続けたいと思ってもらえる『山口らしさ全開』」の「山口らしさ」や「都市の魅力」には、どのようなものがあるとお考えですか。そして、それを今後どのように引き出していかれるのでしょうか。
伊藤 「山口らしさ」や「都市の魅力」とは、他の都市や地域とは異なる歴史文化など、本市ならではの個性や特長であり、ユニークさであるといえます。そして、そうしたユニークさを高めていくことが「山口に来たい」「山口に住み続けたい」と思っていただける「選ばれるまち」となる上で、重要であると考えています。本市のユニークさとしては、まず、約700年にわたって受け継いできた大内文化、国宝瑠璃光寺五重塔を始めとする西の京としてのまちの魅力が挙げられます。また、県内最大の宿泊拠点であるとともに、周辺に都市機能が集積する全国でも数少ない都市型温泉地でもある湯田温泉もあります。そうした中、2024年の米ニューヨーク・タイムズ紙への掲載、昨年の「地球の歩き方 山口市」の発刊、そして、本年には山口デスティネーションキャンペーン(DC)の開催という、国内外から注目が集まる機会が続いています。その流れを途切れさせることなく、歴史や自然、文化・芸術などの個性や特長をさらに磨き、発信していきたいと考えています。
―「住み続けたい」という点ではいかがでしょう。
伊藤 市役所本庁舎が立地するパークロード周辺には、県立美術館・図書館・博物館、市民会館などの教育・文化施設が集中して立地。本市の魅力の一つである教育・文化・芸術を象徴した、そして自然と調和した魅力的な都市空間となっています。こうした教育文化都市としての魅力をさらに高めていけるよう、県都の顔としてふさわしい本庁舎周辺整備を引き続き進めていき、パークロード周辺に集積する教育文化施設等との連携強化に取り組んでまいります。また、市内に立地する山口大、県立大、学芸大の3大学それぞれに文系DX人材を育成する体制が整えられています。加えて、市内に情報関連企業が集積していることも強みの一つと捉えています。そのことを生かし、クリエーティブ産業の振興による新たな地域経済の活性化の方向性を検討し、雇用の受け皿づくりとすることで、若者定着の促進も図っていきます。
―小郡都市核の整備も、「都市の魅力」向上に大きく貢献していると感じます。
伊藤 県内で最も乗車人員が多い新幹線駅の新山口駅は、広域的な交通結節機能や交通アクセス機能を有しています。その周辺には、大規模MICE(会議、展示会・見本市、イベント等)やコンサートを開催できるKDDI維新ホールがあります。こうした特性を生かした、新たなにぎわいや交流が創出されていることから、その流れをさらに加速化させたいと考えています。まずは、駅周辺への新規出店やMICE等の誘致支援など、既存事業にしっかりと取り組んでいき、課題として認識している駐車場不足への対応や、市街地拡大の可能性についても検討を進めようと考えています。
―これまでは山口市を素通りしていた大物アーティストのライブやコンサートも、維新ホールができたことで一定数が開かれるようになりました。例えば、昨年11月にはYOASOBIのコンサートが2日間にわたり開催。もちろんチケットは即完売でしたが、この時YOASOBIが山口市で演奏したことを知らない人も多いです。
伊藤 例えば「あのYOASOBIが山口に来る(来た)」と、一般市民の間で話題になるかどうか、そのことによって施設や地域の印象は大きく変わってくると思います。ネットの情報だけに偏りますと、実体的には広がっていかないとも感じます。
―昔は、当時のトップアイドルらが次々に市民会館でコンサートをしており、そのことを大勢の市民が認知していました。1979年に県立体育館であったクイーンのコンサートは、いまだに語り草です。そのことが"山口自慢"にもなっています。
開作真人サンデー山口社長
伊藤 「この町にこんな人が来た」「この町でこんなすごいことがあった」と、直接行かなくても知っていることは、都市の価値やシビックプライドの向上にもつながりますよね。
―今のネット社会は、例えばコンサートなら、「チケットを買ってくれそうな人にだけ情報が届けば良い」というのが費用対効果を考える主催者側の論理です。それは経営を考えると当たり前のことですが、印刷・配布等のコストがその都度かかるサンデー山口のようなような媒体で情報(広告)が流れる機会は、飲食店や小売店なども含めて減少しています。
伊藤 経済面だけを考えますと、それで動いていけるところもあるのでしょうが、「地域社会をどのように構築していくのか」という視点からは問題があるようにも感じます。ネットと紙、情報発信方法の二極化が進んでいるという話も印刷会社の社長さんから先日伺いましたが、雑学的な街の情報を一目で見られるような"場"があるのかないのか、マクロな視点で考えますと、今後の定住人口の増減に関わってくるのかもしれませんね。
―さて、昨年のプレに続き、今年は10月から12月にかけてDCの本番を迎えます。
伊藤 本市への誘客拡大に向けた、まさに勝負の年になるものと考えています。「地球の歩き方 山口市」の中でも紹介された、歴史文化を始めとした本市固有の魅力をさらに高めて発信するだけでなく、県央連携都市圏域の枠組みを生かした広域観光連携の取り組みなどを通じて、誘客促進を図っていきたいと考えています。また6月には、近年国内でも愛好者が増えている「ピックルボール」の国際大会「ジャパンオープン」が、維新百年記念公園の維新大晃アリーナで開催されます。国内外から多くの人が来山される本大会を契機として、おもてなしの機運を高め、本市の魅力をさらに発信していこうと考えています。
今後は「スクラップ」を進めていく局面に 持続可能なサービスを再構築
―「持続可能でスマートなまちづくり」も掲げられました。
伊藤 「まちをスマートに」とは、重複する施設や複雑な行政サービスの仕組みをもっと分かりやすく、持続可能な仕組みに作り変えていくという考え方です。合併後のまちづくりでは、市民生活や経済活動への影響を最小限とするために、都市基盤整備や公共施設整備、いわゆるビルド・アンド・スクラップの「ビルド」を先行して進めてきました。そのビルドが完了しつつある中、新市誕生以前の公共施設等については、重複する機能を持った施設の集約化や、適正な規模への縮小、老朽化した施設の除却といった「スクラップ」を進めていく局面が到来しています。
―ソフト面ではいかがでしょうか。
伊藤 合併前の旧1市5町(2010年に阿東町が新山口市に編入)の仕組みを急速に変更することができない中、一部重複化や複雑化せざるを得なかった仕組みもありました。時代や市民ニーズも変わっていく中、真に必要なサービスは充実させつつ、持続可能な形で再構築する必要があると考えています。環境に優しい技術やデジタル技術も柔軟に活用しながら、子育て世代も高齢者世代も暮らしやすい、人に優しいまち、子どもたちや未来に責任を持って引き継いでいける、持続可能でスマートなまちづくりを進めていきたいと思っています。
ー昨年5月に供用開始となった新本庁舎棟にも、時代に合わせた機能をいろいろと導入されました。
伊藤 「ひと・まち・未来にやさしい」が基本理念で、「未来」に優しい庁舎として、100年先まで使い続けることのできるよう工夫を凝らしています。例えば、庁舎の西側は日射角度に合わせたひさしやルーバーにより、西日を遮蔽(しゃへい)し熱負荷を低減することでエネルギー消費の削減につなげています。また、冷温水を循環させることで発生する輻射熱を利用する天井放射空調を採用。ビルエネルギーマネジメントシステムを導入し、モニタリングすることで、エネルギー利用の最適化を図っています。これらの取り組みにより、従来の建物と比べて、必要な一次エネルギー消費量を50%以上削減する「ZEB Ready」の認証を、庁舎としては県内で初めて取得。脱炭素社会の実現に向けて、先導的に取り組んでいます。
―「ひと」に優しい部分は?
伊藤 これまで分散していた環境、教育、消防などの部署を集約し、デジタル技術を取り入れた効率的な行政運営を進めていきます。とりわけ、市民の皆さまの利用が多い窓口を1階と2階に集中配置。引っ越しやお悔やみなど、目的ごとに窓口を設置しました。さらに、番号発券機やオンライン予約を導入することで、ワンストップで対応できる「書かない」「待たない」総合窓口サービスを提供しています。また、障がい者、高齢者、子ども連れの人など、誰もが安心・安全・快適に利用できるよう、ユニバーサルデザインを採用。トイレや案内サインなど、各所に工夫を施しています。さらに、福祉・教育・子育てなどが連携した、きめ細やかな相談支援を実施するなど、より質の高い市民サービスが提供できるサービスセンターとして、しっかり機能できる取り組みを進めていきたいと考えています。
―では、最後に市民に向けて一言お願いします。
伊藤 2期目の任期の実質的なスタートの年となりますが、これまでに多くの関係者の皆さまと共に進めてきた「ずっと元気な県都山口」の実現に向け、強い使命感を持って本市のまちづくりを進めてまいります。新市誕生20年を迎え、本市のまちづくりは、「合併モード」から「新たなまちづくりモード」に入りましたが、これからの4年間はその準備段階であると考えています。第三次山口市総合計画および第4期山口市中心市街地活性化基本計画等を策定する中で、新たなまちづくりを具体化していくことになります。今後本市においても、一定程度の人口減少が避けがたい中、将来にわたって持続可能な活力あるまちづくり、人口減少社会への適応策を本格化させていくことになります。財政運営や市政運営のあり方、まちづくりの方向性等について、将来の山口市に対する思いや夢を市民と共有していきたいと思います。そのためにも「市民を大切に。地域を大切に。」、これまで以上に皆さまからのご意見に耳を傾け、しっかりと対話をしながら、新たなまちづくりを進めていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。