ある村に、腕のよい藍染め職人のおじいさんが、おばあさんと一緒にくらしていました。二人の悩みは子どもがいないこと。
「だれがわしのあとを継ぎ、布に型付けをして、青く染めてくれるだろう?」
ところがあるとき、不思議なめぐりあわせによって娘をさずかります。二人はその子に「アポレンカ」(光の少女)と名付け、大切に育てました。
アポレンカは大きくなるとおじいさんの仕事に興味をもち、手伝うようになりました。藍甕の中に白い布をくり返し浸していくと、深い青に染まります。木型を使って糊をおいたところからは白い模様がうかびあがり、アポレンカはその工程に目をうばわれます。
この子は、藍染めがこの世から消えてしまわないよう、遠い遠い宇宙のはてからつかわされてきた娘だったのです。
藍染めの技は世界各地にありますが、これはチェコのおはなし。伝統的な手仕事の美しさや継承の大切さを伝えるため、取材や文献調査をかさねてつくられました。
藍染めの表情豊かな美しさを堪能できる作品です。
求龍堂(2023年)
作:ロマナ・コシュトコヴァー
絵:ヴェロニカ・ヴルコヴァー
ヤン・シュラーメク
訳:小川 里枝
ぶどうの木代表 中村 佳恵