女性特有のもの、と思われがちな「更年期障害」。個人差はあるものの、ホルモンバランスの変化によって主に40代から50代にかけて起こる心身の不調の総称だが、近年では女性だけでなく男性にも起こることがわかってきた。経済産業省の試算によると、更年期症状による経済損失は、女性で1.9兆円、男性で1.2兆円というデータもある。「更年期」をどう乗り切れば心身ともに健やかに過ごせるのか、考えてみよう。
更年期障害とは
「更年期」とは、女性の閉経前後5年間をあわせた約10年間を指す(図1)。そして、加齢に伴ってホルモン分泌が変化することで、更年期に起こる心身の不調の総称を「更年期障害」という。女性ではエストロゲン(女性ホルモン)、男性ではテストステロン(男性ホルモン)が減少し、ホルモンのバランスが崩れることで、ほてり、発汗、動悸(どうき)などの諸症状が生じ、その影響が日常生活に支障をきたすことを指す。男性の場合は「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症)」と呼ばれることもある。
ホルモンの減少速度や症状のあらわれ方には個人差が大きく、気づきにくいことも特徴だ。
主な症状と影響
症状は多岐にわたり、男女に共通してあらわれるものも多い。(図2)。症状が起こるのが働き盛りの世代のため、近年は更年期障害を抱えながら働く人が増えている。
図2. 男性と女性の更年期障害の違い
症状が重い場合、「家事をしたくても体が思うように動かない」ことや、仕事でミスが増えたり、やる気が低下したりすると「今までのように仕事ができない」と感じることも少なくない。その結果、仕事を継続できず離職・退職するケースも増加している。
経済産業省は2024年2月に「女性特有の健康課題による社会全体の経済損失」を試算。それによると、更年期症状による欠勤やパフォーマンス低下、離職などによる経済損失は、女性で 1.9兆円、男性で 1.2 兆円とされ、社会全体では年間3.4兆円にのぼると発表された。これは、現在の日本国内での慢性的な労働力不足の中で、大きな損失となっている。
日常生活でのセルフケア
生活習慣の乱れは、更年期障害の症状を悪化させる一因だ。
まず、十分な睡眠を確保しよう。就寝前のスマートフォン使用を控える、過剰なカフェインの摂取や飲酒・喫煙に注意するなど、良質な睡眠環境づくりを心がけたい。
適度な運動も、ホルモンバランスの改善やストレス軽減に役立つ。ウオーキングや軽いストレッチなど、無理のない範囲で取り入れてみよう。
ストレスをため込まないことも重要だ。ストレスを感じたら、休息や気分転換の時間を意識して確保することを心がけよう。
受診するなら何科?
セルフケアで対応できる症状もあるが、つらい症状が長引く場合には、我慢せず医療機関に相談することも大切だ。身体症状がつらい時は、女性なら内科や婦人科、男性ならば内科や泌尿器科を、精神症状がつらい時は、男女ともに心療内科を受診することで、症状が軽減することもある。
更年期症状のあらわれ方は千差万別で、約200種類以上もの症状があると言われる。更年期障害と似た症状が別の病気によって起こる場合もあるため、自己判断には注意が必要だ。適切な治療やサポートを受けることは、より前向きに健やかに過ごす後押しとなる。我慢や無理をしすぎず、自分の心身と丁寧に向き合い、充実した更年期を過ごしていこう。