宇部市の西宮八幡宮には、江戸時代に北前船(きたまえぶね)によって北陸地方から運ばれた狛犬(こまいぬ)が伝わっています。狛犬は、福井県で採れる「笏谷石」(しゃくだにいし)という緑色の石でつくられています。笏谷石は、軟質の凝灰岩で加工しやすいため、狛犬のほか、墓碑や石瓦などに利用されていました。
笏谷石の狛犬は、北前船の船乗りたちが、寄港した各地の神社などに奉納したものです。北陸をはじめ、北海道や青森県など、ほとんどが日本海側にあり、瀬戸内海沿岸では、西宮八幡宮が唯一の例です。この貴重な狛犬が、2026年2月8日まで山口県立山口博物館で開催中の企画展「中世山口への海と道」で、初めて一般に公開されています。
海を渡って運ばれてきた笏谷石の狛犬は、宇部の地がもつ、経済や信仰を通じた交流の歴史を鮮やかに伝えています。ぜひ会場で、ご覧ください。
山口県立山口博物館 考古担当学芸員 阿部 来