山口県立美術館の収蔵品の中から人を描いた油彩など27点を紹介する展覧会。その冒頭の解説にロマンティックな一説が引かれている―「古代ローマの博物学者・大プリニウスによると絵画の起源は戦地に赴く恋人の影を写したことである・・・」。
真偽のほどは定かでない。とはいえこれは、恋しい人に永遠に触れていたいという決してかなわぬ願いが、絵を描くことの奥底に横たわっていることを物語る逸話ではある・・・などと考えながら展覧会を見ていると、突如、そんな甘美な夢想を台無しにするような異形のヌードが現れた―あふれ出てくる筈のあの甘やかな香りが漂ってこないのである。
では、この美しい「青」に浮かぶ「はだか」からこぼれ出る、なんともいえないなにかは何なのだろう。それはおそらくは、「似姿」からは決して感じとることができない「無垢なやさしさ」とでも呼ぶべきなにかである。
※「“人”を描く」より(2026年4月26日まで)
山口県立美術館 河野 通孝