私は風呂は面倒で嫌いだが、こんなに寒い日が続くと温かい風呂が好きになる。湯舟の中で身体を伸ばし、手を撫でながら、良く働いてくれてありがとうね。これからもよろしく。
いや、この皮膚とはもうすぐお別れだ。皮膚の入れ替わる周期は二十八日。たった四週間の出会い。その別れの日が今日かもしれない。石鹸を泡立てて丁寧に洗おう。
髪も洗う。抜け毛が手に絡まる。髪の寿命は三年から五年と美容師さんから聞いた。今抜けていった毛は、三年以上頭に生えていたのね。ご苦労様。なんか抜けようが多いような気がするが。数年前から、頭髪が薄くなってきたのがわかる。仕方がない。
このように、徐々に持ち物が減らされていく。歯が抜け落ち、軟骨がすり減り、目も焦点を上手く結ばず、耳も脳も機能が落ちてゆく。少なくなる散歩の距離、握力・・・。
若い身体のまま寿命まで生きていかれないのは何故? アメーバのように分裂して子孫を増やさないのは何故? そこには生物の、人間の深い企みがあるのだろう。
老いにより獲得するものとは何か? 精神の変化、それにより広がる見識、価値観の修正、獲得する静謐、甘美な思い出を辿る密かな楽しみ。
それにしても冬の風呂はいいな。