円盤状の黒い物体が床に置かれている。直径126㎝。中心に向かってなだらかに盛り上がった先に、穴がある。
作家曰く、「子供の頃、障子の破れから外を見るのが面白かった。穴を覗くと、外の電柱や家の屋根、立木が非常に近く、鮮明に見えて驚いたものである。このことが空間的な作品《ドッキング》をつくる始めになった。いまではこの穴を貫通する視線の先に見えるのは宇宙の無限性「宇宙性」ということになる。宇宙は無辺際の自由に無限に、あるがままに在るだけである。ここに私は限りなくこわさをみる」ということらしい。
後半がどうにも難しい。そこで、「宇宙」という言葉を、もう少し身近な現実に置き換えて考えてみる―例えば「欲望」とか・・・。
わかったような気がしなくもない。「限りない」怖さではなく、「限りなく」見てしまわざるを得ない怖さ。
作家は穴の向こうに見てしまったのだ。「限りなく」が続く「在る」ということの怖さを。
山口県立美術館 河野 通孝