長門市三隅の熊野権現社には、石でできた一対の狛犬(こまいぬ)が伝わっています。右の阿形(あぎょう)は子獅子を抱き、左の吽形(うんぎょう)は毬(まり)を持つ姿で、首輪に鈴を下げた異国風の造形です。日本の狛犬とは似ているようで少し雰囲気が違う、「宋風獅子」(そうふうしし)と呼ばれる中国からの渡来品です。2025年12月12日から山口県立山口博物館ではじまる企画展「中世山口への海と道」で、初めて一般に公開されます。
三隅の狛犬は、高さ70センチを超える大作で、全国に20件ほどしか確認されていない宋風獅子の中でも最大級のものです。室町時代に中国の商人・慶載(けいさい)が奉納したとの伝承があります。慶載の名前は、三隅八幡宮に残る経典にも記されていました。
この狛犬は、三隅の地が海を通じて東アジアと交流していた歴史を伝えています。ぜひ、会場でご覧ください。
山口県立山口博物館 考古担当学芸員 阿部 来